産後の育児の中で、腱鞘炎に悩まれる方は多いです。
腱鞘炎は手の使い過ぎが一番の原因ですが、育児の最中は、休みたいけど休めないという状況があり、腱鞘炎が慢性化しやすいです。
産後の腱鞘炎は、事前に知識と情報を知って、予防や早期発見することが大切です。
産後の腱鞘炎とは
産後の腱鞘炎というのは、産後の育児の中で、手の親指や、手首が痛くなる症状のことを言います。
手首や指の関節は、筋肉が伸び縮みすることで動いています。
筋肉というのは、骨にくっつく時に腱という硬い組織(アキレス腱など)になります。
そして、腱は腱鞘という組織に包まれています。
腱鞘炎というのは、腱を包んでいる腱鞘が炎症を起こして、腱が上手く動くことが出来なくなってしまった症状のことを言います。
産後には腱鞘炎の他に、ばね指という指の症状や、手にしびれが起こる手根管症候群になることもあります。
産後のばね指
ばね指というのは、指の腱を包む腱鞘や、指の腱自体が肥厚して、指が曲げ伸ばししにくくなったり、弾発症状と呼ばれる指が引っかかる症状が起こることを言います。
親指や中指に起こることが多いです。
産後の手根管症候群
手根管症候群というのは、手根部にある手根管というトンネル(筋肉の腱や神経が通る)で、正中神経という手や指の神経が障害されて、しびれや痛みが起こる症状のことを言います。
親指から薬指にかけてしびれや痛みが起こったり、症状が進行すると服のボタンが留めづらくなったり、小銭をつまみにくくなったりします。
産後の腱鞘炎はいつから始まる?
産後には、腱鞘炎までにはならなくても、産後数日から手首の痛みや違和感を感じる方がいらっしゃいます。
そして、産後2か月頃には、およそ半分の方が、手首や指の痛み違和感を感じているという調査結果があります。
産後半分の方というと、かなり多くの人が、手首や指の不調を感じているんですね。
その中で、腱鞘炎が疑われる人が、30%いるという調査結果があります。
この数字からも、産後に腱鞘炎になる方はかなり多いと考えられますので、しっかりとした情報提供と対処が必要です。
参考論文:「産後女性の手や手首の痛みと関連要因」佐 藤 珠 美・エレーラ C. ルルデス R.・中 河 亜 希・榊 原 愛・大 橋 一 友
産後の腱鞘炎はいつ頃良くなる?
産後の腱鞘炎は、発症から数か月で改善することが多いですが、半年以上痛みが継続する方や、再発する方もいらっしゃいます。
いまい整体院にも、産後一年以上腱鞘炎が改善しない方が、ご来院されます。
腱鞘炎が良くなる人と、良くならない人の違いはどこにあるんですか?
いまい整体院にご来院された方を診させて頂くと、手首や指だけでなく、姿勢が悪かったり、肩甲骨や肩の動きが悪かったりと、全体的な体の機能の悪さが目立ちます。
おそらく、元々体の機能の悪さがある方は、腱鞘炎が改善し辛く、元々体の機能が良い方は、育児における手首や指の負担が減るタイミングで、腱鞘炎が良くなっていくと考えられます。
なるほど、腱鞘炎中々良くならない方は、元々体の機能に悪いところがあるんですね。
産後の腱鞘炎は予防と早期発見が大切
産後の腱鞘炎は、予防と早期発見が大切です。
産後の腱鞘炎の予防の為に必要なこと
産後の腱鞘炎を予防するのに一番必要なことは、産後は手首や指に痛みや違和感が出やすいことを知ることです。
逆に言えば、知らないことで、予防しようと気をつけたり、ケアをしないという状況が出来てしまうということです。
例えば、車でも電車でも、故障しやすい箇所があり、そういった箇所は点検の回数も多く行い、部品交換も頻繁に行います。
産後の育児においては、一番故障しやすい場所というのが、手首や指です。
確かに、事前に手首や指を痛めやすいことを知っていれば、気をつけたり、ケアをしたりしますね。
そうです。
ですから、産後の腱鞘炎の一番の原因は、産後に手首や指を痛めやすく、一度痛めてしまうと改善し辛く、育児にも大きな影響が出てしまうことを知らないことだ、とも言えますね。
産後の腱鞘炎を早期発見するために
産後の腱鞘炎を早期発見するためには、自分でチェックをすることも大切ですが、医療者や保健師の方が、腱鞘炎のことをしっかりと理解することが大切です。
なぜなら、腱鞘炎になっているかどうかを自分で判断するのが難しいからです。
ですから、医療者や保健師の方が、腱鞘炎になりそうな状態や腱鞘炎になってしまっている状態を見分けて、適切な対処を行うことが大切です。
端に手首や指が痛いのと、腱鞘炎は違います。
単に手首や指が痛い状態であれば、手を休ませたり、湿布を貼ったり(授乳中のシップ使用は薬剤師の方に相談しましょう)、抱っこの仕方を変えることで、改善が出来ます。
ですが、腱鞘炎になってしまうと、病院でしっかり対処することが必要になります。
単に手首や指が痛い状態の時に、適切に対処すれば、腱鞘炎にはならないんですね。
でも、どんな時に病院に行ったり、保健師さんに相談すれば良いのですか?
育児の最中は中々病院にも行けない状況にありますが、手首や指の痛みが1週間以上続く時には、病院に行った方が良いです。
腱鞘炎というのは、腱鞘や腱に炎症が起きている状態です。
そして、炎症が起きる前には、怪我でないかぎり、手首や指が痛い・違和感があるだけの状態があります。
手首や指が痛い・違和感がある状態の時には、炎症が主な原因ではなくて、筋肉が硬くなっていたり、関節の動きが悪くなっているという体の機能が悪くなっているだけの段階です。
この機能が悪くなっているだけの段階であれば、改善も早いです。
腱鞘炎の早期発見が大切というのも、炎症が症状の主原因になってしまう前であれば、改善がすぐにできるからです。
整体で対処・改善が出来るのも、炎症が主原因ではない手首や指の痛みです。
ただ、腱鞘炎になっているかどうかの判断は自分では難しいため、手首に痛みや違和感が出た時には、なるべく早く、病院に行ったり、保健師の方に相談したり、整体院や整骨院に行くことをお勧めします。
産後の腱鞘炎になってしまった時は?
手首や指が痛い・違和感がある段階を超えて、腱鞘炎になってしまった時に大切なことは、炎症を抑えることです。
そのためには、まず病院で腱鞘炎の状態を確認することが必要です。
そして、なるべく手を休めることが大切です。
腱鞘炎になった時には、炎症が起きているので、ストレッチやマッサージなどのセルフケアが出来ない状態です。
ですから、改善させるためには、どうしても手を休める必要があります。
そうはいっても、育児の最中に手を休めるのは難しいです…
そうですね。
ですが、長期的に考えると、今手を休めて炎症を抑えることは、何よりも必要なことです。
手が痛い状態での育児は、肉体的にも精神的にも大変ですので、まずは、腱鞘炎を改善していくことを優先しましょう。
産後に腱鞘炎になる方のお話をお聞きすると、休みたくても休めない状況にあったり、産後の腱鞘炎について知らなかった方がほとんどです。
ですから、産後の腱鞘炎の真の原因は、一人の養育者に負担が集中しやすい環境や、産後の腱鞘炎についての情報不足といった社会の問題であると言えます。
私は、産後の腱鞘炎は個人での解決が難しい問題だと思います。
もしもあなたのご家族や、身近な方に産後の腱鞘炎で悩まれている方がいらっしゃいましたら、手を差し伸べてあげてください。